流産を繰り返しやすい方について(不育症)
流産とは
妊娠したにもかかわらず、妊娠の早い時期に赤ちゃんが亡くなってしまうことを流産と言います。
定義としては、妊娠22週(赤ちゃんがお母さんのお腹の外では生きていけない週数)より前に妊娠が終わることをすべて「流産」といいます。
流産の頻度
医療機関で確認された妊娠の15%前後が流産になります。また、妊娠した女性の約40%が流産しているとの報告もあり、多くの女性が経験する疾患と言われております。
下記の図のように30代後半からは、流産率は加齢にともない著しく上昇します。この時期の流産は胎児の染色体異常が原因であることが多いと言われています。
年齢区分 | 妊娠例数 | 流産例数 | 流産率(%) |
---|---|---|---|
24歳以下 | 90 | 15 | 16.7 |
25~29歳 | 673 | 74 | 11.0 |
30~34歳 | 651 | 65 | 10.0 |
35~39歳 | 261 | 54 | 20.7 |
40歳以上 | 92 | 38 | 41.3 |
合計 | 1767 | 246 | 13.9 |
虎ノ門病院産婦人科 1989.1~1991.7 データ
母体年齢と流産 周産期医学 vol21 no.12, 1991-12
流産の原因
早期に起こった流産の原因で最も多いのが赤ちゃん自体の染色体等の異常です。
つまり、受精の瞬間に「流産の運命」が決まることがほとんどです。この場合、お母さんの妊娠初期の仕事や運動などが原因で流産することはほとんどありません。
繰り返す流産
反復流産
流産の繰り返しが2回の場合を「反復流産」と呼び、頻度は2~5%と言われています。
習慣流産
流産を3回以上繰り返した場合を特に「習慣流産」と言います。
流産は誰にでもおこる病態です。しかし、3回以上繰り返す場合は1%程度の頻度であり、両親に何らかの疾患が隠れていることもあります。
血液検査で判明する疾患、子宮のかたちの異常、カップルの染色体異常、免疫学的なものなどが原因として知られていますが、原因がはっきりしない場合も多いとされています。
西洋医学的対処法
1:ホルモンの異常・内科の病気に対して
原因に応じて、ホルモンを補充したり、調整したりする薬を使います。
2:子宮のかたちの異常
子宮頸管無力症は、子宮頸管を縛る処置を行います。
3:カップルの染色体異常・免疫学的なもの
残念ながら現時点で、根本的な治療法はありません。
漢方医学的対処法
繰り返す流産を漢方薬では「滑胎カツタイ」と呼んでいきます。
また妊娠12週以内に胎児が亡くなることを「堕胎」、12~28週以内に亡くなることを「小産」または「半産」と区別していきます。
「滑胎」「堕胎」「小産」の臨床に関しての記述は『金匱要略』『脈経』をはじめ多くの歴代の医書に記載がされております。
主な病因病機
「胞脈は腎に系る。衝脈・任脈の二脈はともに胞中より起こる」という考え方があります。
胎児はすべてを母体の腎系に頼り気血を養い、衝脈・任脈がこれをまとめているという考えです。
つまり父母の腎系が元気でない。また、気血が不足していると胎児を守ることができなくなり、「滑胎」(流産)が起きやすくなってしまいます。
腎陽虚による流産
現れやすい症状 | 繰り返す流産
妊娠後に腰膝がだるい、冷え、眩暈・耳鳴りなどを感じる、頻繁な睡眠時の排尿、便が緩い、顔色が白いなど |
といった特徴があります。
胎児を守っていくために重要な腎(子宮)を温めていく働きが低下していることで起こりやすい流産になります。
そのため、腎陽虚により繰り返す流産の場合は温補腎陽、固衝安胎の漢方薬を中心に使用していくことになります。
代表的な漢方薬として
腎気丸加減があります。
熟地黄 | 山茱萸 | 山薬 | 茯苓 | 牡丹皮 | 桂枝 | 附子 | 菟絲子 | 杜仲 | 白朮 |